“うまこ”のカウンセリングルーム

カウンセリングと占いと。

「ハゲスロット」

ミツオは何もかもうまくいかないと感じていた。仕事でのプレッシャー、人間関係での葛藤、そして最も深刻なのは、自分の髪の毛が次第に薄くなっていることだった。30代に差し掛かっていたが、既にハゲスポットが頭頂部に広がっていた。

 

ある日、ミツオは同僚から聞いた話を思い出した。その話とは、ある都市伝説に関するもので、とある地下街にあるスロットマシンを回すと、薄毛が治るというものだった。

 

最初は冗談だと思っていたミツオだったが、自分の髪がどんどん薄くなっていくことに業を煮やし、その都市伝説を信じるようになった。そこで、ある日、彼はその地下街を訪れ、スロットマシンを回した。

 

スロットマシンは止まり、画面には「ハゲスロット」という文字が表示された。そして、ミツオは信じられないほどの大金を手に入れた。彼は喜びに震えながらスロットマシンをもう一度回し、再び大金を手に入れた。

 

しかし、彼の髪の毛は一切生え揃わなかった。むしろ、更に薄くなっていくようだった。ミツオはショックを受け、スロットマシンに叫びかけた。

 

「なぜ?! なぜ僕の髪の毛は生え揃わないのか!?」

 

すると、スロットマシンから不気味な音が鳴り響いた。

 

「ハゲスロットで大金を手に入れた者は、必ず髪の毛を失う運命にある。だが、それでも貴様たちは、手放すことができない。このハゲスロットは、貴様たちの欲望を満たすために存在する。だが、その代償として、貴様たちは何かを失うことになる。それが、髪の毛でも、健康でも、家族でも、人生の時間でも、何であろうともな。」

 

ミツオはスロットマシンを睨みつけた。自分が欲しかったのは、ただの髪の毛だけだった。彼は何もかも手に入れたつもりでいたが、実際には何も手に入れていなかったことに気づいた。

 

ミツオは地下街を出て、外の明るい空気を吸った。彼は自分がやったことに後悔した。しかし、もう一度スロットマシンを回してしまいたいという衝動に駆られていた。

 

それから何週間も経ち、ミツオは自分がやったことを忘れようと試みた。しかし、スロットマシンの誘惑は消えることがなかった。彼は再び地下街を訪れ、スロットマシンを回し始めた。

 

スロットマシンは今度は何も出さなかった。ミツオは再びスロットマシンに叫びかけた。

 

「どうして何も出ないんだ!?」

 

スロットマシンは応えた。

 

「貴様は、もう十分に手に入れている。手放すことができないものを。」

 

ミツオはスロットマシンを睨みつけた。スロットマシンは彼の目を見つめ、何も言わずにいた。しかし、その目には何かが映っていた。それは、自分自身の弱さと欲望だった。

 

ミツオはスロットマシンを去った。彼は自分のやり方が間違っていたことに気づいた。彼は自分が欲しかったものはすでに手に入れていたことを理解した。それは、人生を送る上で大切なもの、家族や友人、健康や幸福だった。

 

ミツオは自分が手に入れたものに感謝することを決めた。彼は自分が持っているものに満足し、スロットマシンの誘惑に打ち勝った。

 

そして、彼は鏡を見た。彼の頭頂部には、まだハゲスポットがあった。しかし、彼は今、それを気にしなかった。彼が手に入れたものは、それよりもはるかに価値があった。

 

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